桑原志織さんのオールショパン凱旋リサイタルは、事前の期待を大きく超える非常に印象深い体験でした。2階右側前方という座席位置から、音量や迫力にやや不安もありましたが、その心配はまったく不要でした。
ホール全体が豊かな響きで満たされ、座席条件を超えて空間そのものが音楽に支配される感覚がありました。
桑原さんの演奏で特に際立っていたのは、評判通りの「ピアノを歌わせる力」でした。旋律は自然な呼吸を持ち、まるで声楽のようにしなやかで、艶のある音色。その音には派手さや過剰な力みはなく、むしろ柔らかさと芯を併せ持ちながら、深く響き続ける美しさがありました。大きな派手な音ではなく、「響く」とはこう言うことなのか!と納得させられるものでした。
内声は必要以上に前へ出ることはないが、決して埋もれることもなく、全てが自然に溶け合いながら響いていました。各声部が無理なく統合され、演奏全体が空間に存在しているようでした。
特に低音の響きは圧巻で、鳴るたびに身体の奥まで届き、思わず身体が震えるような感覚がありました。
艶、響き、歌、そして包容力。音色そのものの美しさと空間を満たす響き。品格のある迫力。
桑原さんの演奏は、単に音を鳴らすのではなく、ホール全体を歌わせているかのような感覚でした。
プログラムのフィナーレ、ソナタの第四楽章では、会場全体が彼女の音に集中している一体感も味わえました。
艶やかに歌い、深い響きで空間を満たすその演奏は、非常に豊かで身体的にも強く刻まれる、桑原志織さんだけの特別なショパン。
ピアノ一台ででここまで空間を支配できるのか!
また聴きたい、と言うよりも、また体感したいと思う演奏家です。
素晴らしかった!
2025年04月20日 00:21