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2024/11/09
音楽仲間とともに自由な編成で室内楽を楽しむ――そんな温かな『場』を提供するのが、内田さんが主催するプロジェクト『弁天百暇堂』。アマチュアオーケストラ奏者や家族、同僚など、多彩なメンバーが集まり、2003年の発足以来、31回もの演奏会を重ねてきました。その活動の裏にある情熱や、広がり続ける室内楽の魅力に迫ります。
——主催されている「室内楽プロジェクト『弁天百暇堂』」とはどのような団体ですか?
内田主催者の私は大学の室内楽サークル出身です。卒業後も室内楽を続けたくて発足させました。卒業後は大学の先輩に誘っていただいて演奏会に出演していたのですが、もっと自分で演奏の機会を作りたいと思って始めました。 社会人の市民オーケストラにも入っていたので、そこで得た新しい仲間たちと室内楽で何か面白いことができるのではないかという可能性も感じていました。
——室内楽の魅力はどのようなところにありますか?
内田「一人一パート」という点ですね。弦楽器の場合、オーケストラでは複数の人で同じパートを演奏しますが、室内楽は自分が頑張れば頑張るほど、直接的に音楽に反映されます。 アイコンタクトを取りながら他のパートとハーモニーを作ったり、リズムであおったりできるんです。そうしたダイレクトな関わりが面白く、どんどんのめり込むようになりました。 中学・高校時代に吹いていたホルンを練習する場を確保したくて始めた室内楽サークルとヴィオラでしたが、卒業する頃には、もうほとんどヴィオラ一本になっていましたね。
——「弁天百暇堂」は大きなアンサンブル団体という印象を受けますが、メンバーの皆さんはどういった方々なのでしょうか?
内田私自身は「団体」というよりは、アンサンブルをする「場」として捉えています。だから室内楽“プロジェクト”と称しているんですね。 メンバーも固定というわけではなくて、レギュラーメンバーが管楽器、弦楽器、声楽の15から20名ほどいて、曲目によって人数や楽器が足りない場合には、メンバーからご紹介いただいた方にお声がけして出演していただいています。三重奏などの小さな編成から、ピアノや打楽器が入る大所帯まで、さまざまな編成で演奏します。
——年間の演奏会が4回とお聞きしてとても驚いています!
内田最初は1回だったのが、どうしても取り組みたい曲がたくさんあるので増えました。 一番バラエティーに富んだプログラムを追求している定期演奏会を「本館」、特定の作曲家や編成に焦点を絞る「別館」、弦楽四重奏に特化した「分室」、バロック音楽限定の「分館」と、テーマを分けてシリーズ化しています。3年ぐらい先まで“ネタ”が決まっているんですよ。
——室内楽というと、曲目が限定されているイメージがあったのですが、バラエティー豊かで演奏会が楽しそうですね!
内田弦楽器だけ、金管楽器だけの企画というのは多いのかもしれませんが、私自身がホルンを吹いていたこともありましたし、いろいろな楽器で自由にアンサンブルができることを示したいという思いもありました。 オリジナル曲だけにとらわれず、編成に合わせて編曲した作品を演奏することもあります。
——プログラムはどうやって決められるのですか?
内田最初の頃は私がメインで決めていましたが、コアメンバーから「いつか演奏したい」とリクエストが来るので、その曲をうまくプログラムに取り入れるのにはどういった企画がいいのかを私が考えています。曲だけでなく、楽器の編成を中心にプログラムを考えることもあります。 そうやって考えていくと、関わるメンバーや楽器がどんどん多くなっていくんですよ。最近はハープの入る曲を演奏したいと思っているので、ハープの方とご縁がないかなと思っています。また、将来的にヴィオラ・ダ・ガンバやリコーダーの方ともバロック作品で一緒に演奏したいですね!
——可能性が無限に広がりますね! 今後の活動予定や目標を教えてください。
内田来年7月開催のJ.S.バッハ《ブランデンブルク協奏曲》全曲演奏は、おそらくここ最近で一番大きな企画になると思います。また、作曲家特集では私の好きなラヴェルを来年の冬に予定していて、今曲目を考えているところです。 それ以降は、年下のコアメンバーたちのやりたい曲を積極的に取り入れて、「弁天」ならではの演奏会ができるようにしたいです。彼らもきっとそれを期待していると思うので。メンバーの希望がかなうようにサポートしつつ、自分自身も楽しさを追求していきたいと思います。 また、普段は都内の会場で演奏していますが、地方で出張演奏もできたらいいですね。前日に現場入りして、ちょっとおいしいものを食べて、現地の方とコラボして演奏したり。そういうこともできたら面白いかなと思ってます。
——「弁天百暇堂」の魅力を教えてください。
内田メンバーが挑戦したい曲に取り組めることですね。もし、「弁天」がなかったら、演奏する機会のなかった曲がたくさんあったと思います。メンバーには編成のバラエティーの豊かさも含めて楽しんでもらっていると思いますし、一人一人も、演奏にとても真摯に取り組んでいらっしゃいます。 また、お客さまのなかには、常連さんや、出演者のファンで来ている方のほかに、おそらく目当ての曲があったのだろうという方も結構いらっしゃるので、音楽への知的好奇心も満たせるような場になっているのかなと、自負しています。
——年内最後の12月の演奏会は『弁天百暇堂 vol.16 王国燦爛(おうこくさんらん)〜イギリス音楽の変遷』ということで、イギリス音楽特集ですね。ジェラルド・フィンジ、アーサー・ブリス、ベンジャミン・ブリテン、グスターヴ・ホルストといった作曲家が名を連ねています。
内田弦楽器メンバーを中心にイギリス音楽のリクエストが複数あったので、今回「本館」でお届けすることにしました。ですが、敢えてオリジナルの弦楽合奏曲を外し、声楽が加わる作品を取り上げたり、ホルストの吹奏楽の名曲《吹奏楽のための第1組曲》を弦楽合奏と最小限のパーカッションを加えたアレンジで演奏したり、というのが「弁天」ならではのこだわりです。 イギリス音楽はドイツ音楽ほど重たくなく、フランス音楽にも似た色彩感があり、日本の民謡に近いメロディーが心の琴線に触れてきます。一方で後にビートルズも生んでいるぐらいですから、モダンなものを積極的に取り入れる懐の深さもあったりと、そういったイギリス音楽の魅力をお届けできるようなプログラムにしました。皆さんのご来場をお待ちしています。
アマチュアの「室内楽デパート」
中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています