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2025/08/06
近現代の名曲を軸に、深い音楽性と物語性をもって聴衆の心に響く演奏を届けている、弦楽四重奏団「タレイア・クァルテット」。結成から10年を超えて進化を続ける4人が、2025年10月4日に第1回定期演奏会を開催する。プログラムには、ヴァインベルクとヤナーチェクという、鋭い感情のうねりを内包した作曲家が選ばれている。 メンバーが語るのは、作品への共鳴、自身の音楽観、そしてクァルテットというかけがえのない関係性。4人が紡ぐ音楽と言葉のうねりに、耳を澄ませてみたい。
——10月4日に第1回の定期演奏会が五反田文化センターで開催されますね。まずは今回のコンサートについて教えてください。
タレイア・クァルテット第1回定期演奏会「タレイア、愛を奏でる」
日時:2025年10月04日(土) 13:30開演
場所:品川区立五反田文化センター 音楽ホール(東京都)
詳細 : https://www.concertsquare.jp/blog/2025/202503067.html
タレイア・クァルテット第1回定期演奏会開催!! 2024年12月、バルトーク全曲演奏会を1日で完遂し、20世紀音楽への自信と使命感を高めたタレイア・クァルテット。ショスタコーヴィチ没後50年の今年、彼の友人でお互いに影響し合ったミェチスワフ・ヴァインベルクの弦楽四重奏曲第7番に全力で取り組みます。 そして、レオシュ・ヤナーチェクの「心の声」と真正面から向き合い、「クロイツェル・ソナタ」「ないしょの手紙」の2曲を熱く激しく表現します。
二村定期演奏会という名称のとおり、これからも継続的に開催していきたい思いがあります。今回はヴァインベルクとヤナーチェクという近現代の作曲家に取り組みますが、私たちにとっても新たな挑戦であり、向いている作品だと感じています。
渡部ヴァインベルクは今回初めて演奏しますが、私たちはロシアの作曲家の作品に強く惹かれていて、今後も積極的に取り組んでいきたい作曲家のひとりです。
——「愛を奏でる」というサブタイトルが印象的ですが、選曲のテーマについてお聞かせください。
山田人間味、という言葉になるでしょうか。とくにヤナーチェクの『クロイツェル・ソナタ』と『ないしょの手紙』はどちらも人間の内面や情念、強欲さといった感情が描かれています。演奏している側も非常に感情が揺さぶられますし、そのゆらめきが演奏にもすごく表出する曲なんです。感情をむき出しにして演奏する場面が多くあります。
——ヴァインベルクに取り組むきっかけもお伺いできますでしょうか
石崎今回の定期演奏会を企画してくださった本間賢祐さんの推薦です。私たちにとっても新しい転機となる作曲家との出会いでした。
山田本間さんとは、2年前に紀尾井ホールでのリサイタルにお越しいただいてから、ご縁が生まれました。これまでに何度かリサイタルを開催していただき、この度定期演奏会開催のご提案をいただきました。
——ヴァインベルクの作品にはどのような魅力を感じますか?
二村素朴さのなかにも深さがあるというか。親しみやすさと深さのバランスが魅力的です。断片的に面白いフレーズが出てきて、私たち4人が会話しているみたいな雰囲気があるんです。
石崎それぞれの楽器が個性を存分に発揮して活躍するので弾いていて面白いです。
山田戦争の時代に作られた曲でもあるのでかなりシリアスな曲調なのですが、グッと皆が集中して一つに集まる瞬間がたくさんあります。対照的にそれぞれが活躍する場面もあるので、そのコントラストもお楽しみいただけたらと思います。先日、ヴァインベルクの弦楽四重奏全曲を録音されているダネル・クァルテットのファーストヴァイオリニストMarc Danel先生にレッスンをしていただきました。ヴァインベルクについての詳しいことから演奏面のことまで細かく深く情熱的にレッスンしていただき、とても勉強になりました。
山田特に一楽章の弱音の美しさはぜひ注目していただきたいです。ヴィオラのソロが登場する三楽章にもご期待ください!
——ありがとうございます、ぜひ意識して聴かせていただきます!
——結成から10年を超えて活動を続けていらっしゃいます。継続の原動力は何でしょうか。
渡部この4人で演奏したいという気持ちだと思います。弦楽四重奏曲の素晴らしい曲をこのメンバーで演奏したいという想いが、続けていく力になっています。
石崎みんな余り引きずらない性格で、切り替えが早いのも大きいですね。どんなことも前向きに、次に繋げていく力があると思います。
二村それぞれのライフステージの変化にも皆で柔軟に対応して、自然と妥協案を見つけながら歩んできました。そういう関係性が長続きの理由だと思います。
——なるほど。なにか音楽以外の時でも、メンバーが支えになっているなと感じたエピソードなどはありますか?
山田何度もあります。これまでいろんな経験をメンバーと共にしてきました。コンクールや音楽祭で海外に行ったこともあります。一緒に過ごす時間が積み重なることで、ふとした瞬間に「いま元気かな」と感じたりとか。日常的にも話を聞いてもらったりですとか、家族に近い存在ですね。
渡部話を聞いてもらったりだとかは勿論そうですが、私は出産を経験しておりまして、リハーサルを出産後に再開するとなった時に、みんなすごく快く私の自宅の近くまで来てくれ、身体を労わってくれたり。いつも助けられています。
二村そういった提案が自然とでてくるということが私たちの強みだと思います。先ほどの質問にもつながるかもしれませんが、なにかあっても必ず解決策を見つけ出そうと皆が自然と話し合いますね。
——皆さんが音楽を志したきっかけについてもお聞かせください。
山田4歳でヴァイオリンを始めました。小学生の時に庄司紗矢香さんの演奏を聴いて感動したことがヴァイオリンを続けるきっかけの一つになりました。クァルテットに憧れを持ったのは、ヘンシェル・クァルテットとの出会いからです。感動と憧れ、そして先生方との貴重な出会いがプロへの道を切り拓いてくれました。
石崎私はマイペースに続けてきたタイプですが、私も庄司紗矢香さんの演奏を聴いたことは心に残る体験でした。音楽を超えた宇宙のような世界を、私も表現できたらと思ってきました。
二村私は北九州で育ち、弦楽協会が主催している合奏をきっかけに庄司紗矢香さんの教師をされていた先生から多くの話を聞く機会をいただき、影響を受けました。中学生のときに澤和樹先生と出会い、藝高(東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校)を目指したことが転機となりました。出会いが私を導いてくれたと思います。
渡部両親が音楽家で、幼いころから音楽に真剣な環境で育ちました。高校生の時に今井信子先生の公開レッスンを聴きに行く機会があり、そこでヴィオラという楽器に魅せられたんです。大学入学を機にヴィオラに専念し、東京クァルテットの先生方や今井信子先生に導かれ、クァルテットの道へと進みました。
山田みんな共通して、言葉で表現できない音楽の魅力を体験していますね。
——今後の展望や、目標があれば是非お聞かせください。
石崎ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を極めたいです。険しく高い目標ですが、一生をかけて突き詰めたいと思っている。あとは演奏以外にも、視野を広げていきたいですね。いままで知らなかった世界に挑戦することで、結果的に音楽にも還元されると思うので。
二村同じくベートーヴェンです。精神性を理解して音にしていくことが、とりわけ難しい作曲家だと思います。昨年はバルトーク全曲を1日で演奏するという挑戦をしました。次は結成20周年でベートーヴェン全曲に挑戦できたらなと思います。
山田ベートーヴェンの全曲演奏会を実現できたらいいなということは、私も常に頭にあります。あとは現代作曲家の作品初演や、ピアノなど他楽器との共演もしていきたいです。クァルテットをずっと続けていきたいという気持ちが一番です。
渡部私もメンバーと同じ想いです。あとは同世代の演奏家との共演も、新しいチャレンジとして目標にしたいです。
——はじめてクァルテットを聴くという方に向けて、楽しみ方のヒントがあれば教えてください。
二村まずは4人で演奏している姿を観ていただくと良いのかなと思います。。そのなかで例えば演奏中の呼吸や目と目で合図を送り合う瞬間など、演奏会ならではのやりとりなどにも注目していただけると、私たちクァルテットの人間味を感じていただけるかと思います。
石崎それぞれが個性をワーッと出し合う演奏を感じていただけたらと思います。メンバー各々が個性を100%出していくなかで、ひとつの世界が生まれていくような演奏を披露できたらと考えています。
山田私たちの演奏は、4人の音が重なり合って生まれる“対話”のようなものだと思っています。その瞬間にしか生まれない音楽を、会場で一緒に体感していただけたら嬉しいです。
——本日はありがとうございました!
(インタビュー・構成/交告承已)
中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています