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「本物のオペラ合唱を届けたい」――細谷理恵子さんが語る“声”と向き合う時間

2025/06/22

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おぺら団フレスカリア代表・細谷理恵子さんは、仕事と音楽の両立を経て、現在はオペラ活動に専念しながら、プロのソリストとアマチュア合唱によるイタリアオペラの上演を続けている。

「合唱・オペラ愛好家」そして「これから演奏を始めたい人」へ向けて、細谷さんが語ったオペラ合唱の奥深い魅力とは――。

細谷理恵子(Rieko Hosoya)
東京都出身。ピアノをピティナ創設者、福田靖子氏に師事し、ピティナグレードG級を取得。
高校在学中より東宝ミュージカルや宝塚歌劇を観劇し、ピアノでの弾き語りやダンスに親しむ。卒業後は英文学科で英語を学び、住友商事に30年勤務し、英語を使った国際貿易事業に従事した。

住友商事勤務時代にオペラに目覚め『オペラ 上手なきき方楽しみ方』の著者、澤木和彦氏が主宰するリリカイタリアーナオペラ研究所に入所し、プロフェッショナルコースを修了。
20作品以上のイタリア名作オペラをレパートリーとした。

テノール歌手パリデ•ヴェントゥーリ、指揮者レナート•パルンボ、
ソプラノ歌手パトリツィア•ザナルディ、ウィーン宮廷歌手、ウィーン国立歌劇場専属歌手オリヴェラ•ミリャコヴィッチ、新国立劇場オペラ研修所の元声楽コーチ宮副芳通、各氏のレッスンを受講し、澤木和彦氏の薫陶を受ける。

現在、おぺら団フレスカリア主宰、ソプラノ歌手として活動する傍ら、声楽講師、フレスカリア合唱団の育成にも力を入れている。
好きな言葉は「熱心な素人は玄人に優る」

——まずは簡単な自己紹介と、現在の音楽活動について教えてください。

細谷おぺら団フレスカリアを主宰しております。合唱はアマチュア、ソリストはプロを招いて年に1回をベースに、イタリアオペラを催している団体です。2004年の設立当初は私の発表の場として始めましたが、現在は「オペラをより多くの人に届けたい」という思いで活動しています。

——細谷さんがオペラに出会われたきっかけは、どのようなものだったのでしょう?

細谷私はもともと会社員をしておりまして、音楽大学出身ではありません。オペラやミュージカルに限らず、歌うことが本当に好きだったのです。転機は2000年のミレニアムの頃で、社会が新しい時代に盛り上がりをみせるなか「このままでいいのかな」とふと思いまして。そのときに偶然耳にしたオペラのアリアに感動して、「私も歌ってみたい」と思ったのが始まりでした。

——素敵な体験ですね!

細谷はい!そこで「音楽の友」という雑誌に載っていた広告を見て、リリカイタリアーナオペラ研究所に連絡したことが最初の転機となりました。緊張しながら電話をしたのですが、「1回来てみたら!」とすごく軽いノリで誘っていただいて(笑)。恩師となる澤木和彦先生のもとで「オペラは難しいものではなく、誰でも楽しめるもの。きちんとした道を行けば習得できる」という考えに出会い、以来夢中になっていきました。

——フレスカリアの活動は、ご自身のオペラ活動から発展していったのでしょうか。

細谷最初は私自身が習ったことなどを発表する場だったのですが、どうしてもオペラというのは合唱が必要になります。当初は都度、演目ごとに合唱メンバーを集めておりましたが、仕上がりにバラつきが出てしまって。お客様に「またオペラを観たい」と思ってもらうには、合唱の熱量も常に一定以上であるべきという思いが強くなり、合唱団として継続的に練習する体制に切り替えました。お客様の心と人生に響くオペラを表現しようと、日々がんばっています。

——なるほど!メンバーの方を集めるに際して、オペラ合唱ならではの難しさもあるのでしょうか。

細谷そうですね。大きな壁は「暗譜」と「演技」の二つです。でも実際にやってみると、意外とできるようになるんですよ。大事なことは「オペラが好き」「本格的なオペラを学びたい」という気持ちです。周りの団員から日々吸収していくことで、身体が楽器のように響いていく感覚を覚えていくのです。オペラに少しでも興味があれば、まずは見学に来ていただきたく思っております。

——お話をお伺いしていて、「身体が楽器になる」という感覚がオペラの大きな魅力の一つだと感じました。

細谷本当にそうなんです。オペラはマイクを使いません。これはミュージカルと異なる最も大きなポイントです。オペラだからこそ、大きな声から小さな声まで、生の声が会場全体に届いていく。作品の時代を超えて、人間の感情が紡ぎ出す感動があるんです。

——細谷さんはイタリアでの劇場体験もされたそうですね。

細谷イタリアの劇場は人の声が響かない構造なんです。日本の劇場とはまったく違います。だからこそ、身体を楽器として響かせるように鍛える必要がある。そして日本人が本場イタリアの発声に近づくには、イタリア語の母音の発声を理解することが大事だと思います。同じ母音でも、発音している場所が日本人とイタリア人は全くちがうんです。私たちもまだまだ習得途中で、常にイタリア人に近づけるよう研究しています。

——イタリア語はどちらかというと親しみやすい言語のイメージがありました。

細谷そうでしょう(笑)。 たしかに、イタリア語は読みやすい。簡単だからこそ一番難しい言語なんです。そこに落とし穴があるのです。日本語の発声でイタリア語を歌ってしまっていては、本場のオペラの歌唱はいつになっても伝わらない。

私には実は壮大な夢がありまして。日本人がちゃんとイタリア人の発声で歌えるようになって、本当の生の声で皆さまに感動していただけるオペラを上演したいと常々心に想っているんです。そして、ソリストも合唱団員で構成してオペラを上演したいです。ですからフレスカリアは本物のオペラを追求し、オペラの本質をみんなで学ぶ場でありたいと考えています。

——団員の皆さんとの日々の稽古の中で、印象的なエピソードなどはありますか?

細谷各々仕事を持ちながら参加していますが、オペラへの情熱は本当に強いです。合唱の稽古中の合間にも、ソリストのパートに興味津々なんですよ(笑)。

コロナで会えないときはオンラインミーティングを頻繁に行いました。作品のテーマを決めて、みんなで調べてきて発表するとか、とにかく好奇心・向学心が旺盛なメンバーが揃っています。

また、ひとりひとりの歌唱の上達の為に、各自がソロで歌うコンサートも毎年熱海で開催しています。来年で15回目なのですが、地元の方も聞きに来て下さり、団員の力も入る大切な行事です。

——次回公演についても教えていただけますでしょうか。

細谷8月2日にベッリーニ作曲の歌劇「ノルマ」の抜粋公演と、イタリアオペラの合唱を集めたもの、2部構成のコンサートを行う予定です。ノルマはあまり上演されない演目ですが、マリア・カラスという偉大な歌手が歌うようになり、いまに至る演目です。「Casta Diva」という美しい曲が有名です。ベッリーニという素晴らしい作曲家が作ったオペラですので、きちんとした演奏を表現しなければなりません。そういったハードルを越えるための練習を続けています。

おぺら団「フレスカリア」第25回公演 ベッリーニ作曲 歌劇「ノルマ」

日時:2025年8月2日(土) 16:30開演

場所:北とぴあ つつじホール(東京都)

詳細 : https://operafrescaria.com/norma/


オペラのいいとこどり!
わかりやすい解説を交えてお送りします。オペラが始めたの方もどうぞお気軽にいらしてください!

【プログラム】
第1部 オペラ「ノルマ」ハイライト
第2部 珠玉のイタリアオペラ合唱

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——フレスカリアに参加してみたいという方に向けて、メッセージをお願いします。

細谷音楽活動が初めての方、現在合唱をやっている方のいずれにもお伝えしたいことは、オペラ合唱は決して大変ではないということです。初めはみんな初心者なので、出来なくて当然です。 !まずは気軽に見学に来てみてください。3回くらい見学に来ていただいても全然かまいません。雰囲気を感じていただいて、「いいかも」と思ったら、ぜひ一緒に歌いましょう。

フレスカリアはオペラだけでなく、日本の唱歌やミュージカルなどもレパートリーに加えて練習しています。オペラ合唱だけでなくいろんなジャンルを楽しみながら活動している団体ですので、ちょっとオペラの世界を覗いてみたい、と思う方にも良いのではと思います。

特に男性の方々へ!オペラは熱い胸の思いを歌い上げるロック魂に近いものがあります。マイクを使わずに自分の肉体だけでどれだけの声が出るのか、ぜひ試して頂きたいです。オペラ合唱の男性は少数派ですので、ぜひ仲間に加わって頂きたいです!

——オペラを観に行きたいけど、やっぱり難しそうと思われてしまう観客の方へも、一言お願いします。

細谷オペラって、実はけっこう下世話な内容が多くて(笑)、とても親しみやすいんです。字幕もあるので、ぜひ映画を観るような感覚で気軽に劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。

——本日はありがとうございました!

ホームページ: https://operafrescaria.com/

(インタビュー・構成/交告承已)

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コンサートスクウェア事務局

中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています