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指揮者なしで、40人の呼吸をひとつに―― マンドリンアンサンブル宙が描く“みんなで作る音楽”

2026/01/07

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神奈川県を拠点に活動する社会人マンドリンオーケストラ「マンドリンアンサンブル宙」(以下「宙」と表記)。
指揮者を置かず、メンバー同士のアイコンタクトと呼吸で音楽を紡ぐ、ユニークなアンサンブル団体だ。コロナ禍でも工夫を重ねて活動を止めず、その姿勢に惹かれて入団したメンバーも多いという。

次回の定期演奏会では、マンドリン合奏オリジナル曲、ポップス、映画音楽、さらに団員による委嘱新作まで、多彩なプログラムに挑む宙。
今回は広報担当の林和宏さん、創設メンバーの茂木勝俊さん、今季コンサートマスターの宮本毅裕さん、マンドラパートトップの平井萌花さんの4名に、団の歴史から演奏会の聴きどころまで、じっくりお話をうかがった。

マンドリンアンサンブル宙
2012年6月、20代の若手社会人を中心に結成された、神奈川県を活動拠点とする社会人マンドリンオーケストラ。「音楽を愛する会員が相互の親睦を図り、合同の音楽活動を行うこと」「地域社会の音楽文化の振興に寄与すること」を理念に、毎年2月に開催される定期演奏会に向けて練習・合宿を行う。

近年は鎌倉市内の子ども食堂での出張演奏など、地域に開かれた活動も新たに展開中。設立以来、指揮者を置かないアンサンブル形式で、メンバー全員の力で音楽を作り上げている。
インタビューメンバー左から
林 和宏(マンドラ/広報)
宮本 毅裕(マンドリン/コンサートマスター)
茂木 勝俊(マンドロンチェロ/創設メンバー)
平井 萌花(マンドラ/パートトップ・広報)

——広報の林さんにまずお伺いします。「マンドリンアンサンブル宙」の概要から教えてください。

マンドリンアンサンブル宙は、神奈川県内で活動している社会人のマンドリンオーケストラです。毎年2月の定期演奏会に向けて、月1〜2回の練習や合宿を重ねています。
おかげさまでコロナ禍以降の5年ほどで団員数も増え、活動の幅が広がってきました。最近では、鎌倉市内の子ども食堂「地域食堂ゆきのした」での出張演奏など、地域に出ていく機会も増えています。

——結成は2012年とのことですが、立ち上げの経緯を教えていただけますか。

茂木もともと別のマンドリン団体で活動していた同世代のメンバーが、偶然同じ時期に集まったのが始まりです。団長が大阪でマンドリンアンサンブルを積極的にやっていた方で、上京したタイミングで「こちらでも団体を作りたい」ということになり、4人のメンバーで話し合いを重ねながら、宙としての活動がスタートしました。

——団の歴史の中で、コロナ禍は大きなターニングポイントだったそうですね。

その通りです。2020年、最初の緊急事態宣言が出たとき、活動の方向性について団内でも議論がありました。「家族でも職場でもない集まりを維持したい」という思いが根底にあり、工夫を重ねながら活動を続けてきました。

——その決断が、現在の宙にどのような変化をもたらしましたか?

「音楽を続けられる場」を探していた方々が、宙に入ってきてくださったことです。実は私もその一人なんですよ。当時所属していた2つのマンドリンオーケストラがどちらも活動休止になってしまって。そんな中で「宙は対策を取りながら活動している」と聞いて入団しました。同じような理由で入ってくださった方も多く、結果的に団の規模が大きくなっていく契機になったと思います。

——宙の大きな特徴である「指揮者なしのアンサンブル」は、結成から十年以上の間、一貫して団が大事にしてきたポリシーだと伺いました。

団が大きくなってきたここ数年は、指揮者を置くべきだという案が出たこともあります。ただ、指揮者なしで合奏する我々のスタイルに魅力を感じて入団している方が多いのも事実です。議論の結果、ここは活動の“核”として守っていきたいという結論になりました。今後も維持していきたい所存です。

宮本「指揮者なしのアンサンブル」の一番の魅力は、音楽性が特定の誰かに偏らずに、メンバー全員で音楽を作れるところです。オーケストラだと指揮者の解釈に依存する面もありますが、宙では曲作り担当、コンサートマスター、団員全員が関わることで、「みんなの音楽」に仕上がっていく感覚が生まれます。

——全員で作る中で生まれた、印象的なエピソードはありますか。

宮本昨年の演奏会直前のことです。どうしても本番が近づくと、解釈やテンポについて意見が割れてしまいます。そのとき前任のコンサートマスターが「今回はこの方向でいきましょう」と、最終的に方向性を示してくれました。それで一気に全体がまとまっていったんです。

全員で議論を重ねて音楽を作る中でも、最後はコンサートマスターが責任を持って決定し、全員が納得して進んでいく。役割の重みを強く感じましたね。

茂木創設期から、「お互いの音をよく見る・聴く」というところは何度も練習しました。今では人数も増えて音楽の幅も広がりましたが、「個人に頼りきりにならず、全員で支え合う」という感覚は、形を変えながら受け継がれていると思います。

——現在のメンバー構成や団内の雰囲気についてもお聞かせいただけますでしょうか。

年齢構成は20代〜30代前半が中心で、男女比はほぼ1:1です。高校や大学でマンドリンに触れて、ブランクを経て戻ってきたメンバーも多いですね。コロナ明けのタイミングで「また楽器をやりたい」と入団した人が目立つ印象です。

宮本私もその一人です。大学時代にマンドリンを弾いていた後は暫く演奏活動から離れていたんですが、コロナが明けて「またやりたい」と思ったんです。同年代が多そうな団体に入りたくて。そこで宙を見つけました。

平井団の雰囲気を表すキーワードとしては、「フラットな関係性」や「支え合い」が挙げられると思います。演奏以外でも、みんなで自然と協力する空気が溢れています。

——象徴的なエピソードがあれば、是非教えてください。

平井私が初めてパートトップに挑戦したときのことです。うまくいかないことも多く、「自分の実力が足りない」と感じて悔しい思いをしました。そのときに周りのメンバーが、できないところを責めるのではなく、アドバイスやサポートで支えてくれました。演奏会が終わった瞬間、「支え合いながら1つの音楽を作り上げるアンサンブルの魅力」を強く実感しました。

——素敵なエピソードですね!

平井先ほどの「指揮者なしのアンサンブル形式」の伝統につながるのですが、宙は奏者同士が一対一、あるいは一対多で向き合う感覚が強いです。それがフラットな関係性や支え合いの空気を醸成しているのかなと感じます。

茂木長く所属している立場から見ると、結成当初からのメンバーと、コロナ禍以降に入ってきた新しいメンバーが、今はいいバランスで混ざり合っていると感じます。一度離れたメンバーが再び戻って来られるような場でありたいですし、新しく入った方がその輪に自然に加わっていけるように、下の世代を支える存在として関わっていけたらと思っています。

——新しく入る方が馴染みやすい理由として、広報の工夫も大きいと伺いました。

いざ音楽団に入ってみたら雰囲気が想像と違う、といったミスマッチが起きることも多いと思います。私自身にそうした経験があったので、宙では「良いところも悪いところも、できるだけ全部見せる」というスタンスを取りました。

——かなり具体的に公に発信されていますよね!

Xやホームページでは練習日程や活動場所だけでなく、年間の費用目安、団員の年齢構成や楽器歴のグラフまで公開しています。数値や具体的な情報でイメージしてもらい、「雰囲気」や「価値観」の部分は実際に見学に来て感じていただく。情報公開とリアルな体験を組み合わせることで、入団前後のギャップを減らせたかなと感じています。

宮本私も入団の際、数値情報をかなり参考にしました。Xなどで団員構成や使用楽器、パートバランスまでグラフで発信されていて、ここなら入りやすそうだなと。知り合いゼロで見学に行きましたが、実際入ってみてイメージとのギャップはありませんでしたし、快適に活動を続けられています。

平井私は逆に入団当時は同年代が少なかったんですが、それでも「音楽をやりたい」という目標でみんなが一つにまとまっているので、年齢に関係なく仲良くしていただきました。だからこそ今まで続けられているのかなと思います。

——次回の定期演奏会について、お話をお伺いしてよろしいでしょうか。

マンドリンアンサンブル宙 第13回定期演奏会

日時:2026年2月28日(土) 16:30開演

場所:横浜みなとみらいホール 小ホール(神奈川県)

詳細:https://www.concertsquare.jp/blog/2026/20250809485400.html


マンドリンアンサンブル宙は、2012年6月に20代の若手社会人を中心に結成されたアンサンブル団体です。
当団体の特徴は、マンドリンオーケストラ編成の曲も指揮者なしで演奏すること。テンポや表現等、奏者全員でアイデアを出しあい、音楽を作っています。
今回は、人気のマンドリンオリジナル曲「幻想曲第1番イ短調」「ARSNOVA組曲」をメイン曲に据え、重厚なプログラムでお届けします。
7年ぶりとなる横浜みなとみらいホールでの公演に、メンバーのモチベーションも高まっております。ぜひお越しください!

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平井宙では団員が「やりたい曲」を出し合い、全団員で多数決を行って演奏する曲を決めています。今回は特にバラエティ豊かなプログラムになりました。

マンドリンオリジナルの大曲としては『幻想曲第1番イ短調』や『ARSNOVA組曲』などを軸に据えています。一方で『宙船』や『千と千尋の神隠し』といったポップス・映画音楽も取り入れていて、初めてマンドリンを聴く方にも楽しんでいただける内容になっていると思います。

——特に「宙らしさ」が出ている曲をあえて挙げるとしたら何でしょう?

平井個人的には『ARSNOVA組曲』ですね。二楽章構成で、リズミカルな部分や速弾きなど、表情の移り変わりが激しい曲です。アンサンブルとしてどう作り上げていくか、ぜひ聴いていただきたいです。

宮本私としてはどれもですけれど(笑)アンサンブルとして一番チャレンジングなのは『ジャズ・ポップ・ロック組曲』だと思います。6つの小曲からなる組曲で、人によっては「アンサンブルでやるのは無茶だ」というほど難しい曲です。

その曲を指揮者なしで、アイコンタクトと合図だけで合わせられたら、ものすごい一体感が伝わるはず。ソロも多いので、コンサートマスターとしても腕の見せどころです。

——演奏会全体の聴きどころも教えてください。

奏者の表情や身ぶりに、是非注目していただきたいです。アイコンタクトや首の動きなど、アンサンブルならではの“合わせ方”がたくさん出てきます。

茂木大曲の『幻想曲第1番』や『ARSNOVA組曲』も、本来は指揮者を置いて演奏することが多い曲です。それを指揮者なしで、どのように繋いでいくか。即時の意思疎通で如何に抑揚をつけるか。われわれのチャレンジに注目していただければ嬉しいです。

宮本毎年団員による委嘱作品も取り上げていて、今年も1曲新作を演奏します。詳細は本番のお楽しみですが、「団員が作り、団員が弾く」100%宙オリジナルの音楽です。作曲者として、演奏者として、宙の表現する世界をご体感ください。

平井1曲目の『宙船』も非常にかっこいい仕上がりとなっています。40人編成ならではの、音の圧・アンサンブルの雰囲気を感じていただけると思います。最初の一音からお客様を引き込めるような演奏にしたいです。

——演奏会全体の聴きどころも教えてください。

宙には多様なバックグラウンドのメンバーがいます。新しい風を吹き込んでくださる方も大歓迎ですが、本当に「どなたでもウェルカム」です。楽器を複数所有している団員もいますし、「楽器がない」という方もご相談ください。家庭でも職場でもない、心地よく過ごせるサードプレイスとして、気軽に門を叩いていただけたら嬉しいです。

茂木動画などを見て、少しでも興味を持ったら是非、まずは見学に来ていただきたいですね。指揮者なしでも、こんなにまとまって迫力のある演奏ができるんだというところを、ぜひ生で体感していただければと思います。

平井宙の演奏会は、音楽に詳しくなくても楽しめる構成になっています。ぜひお気軽に足を運んでいただきたいです。私たちも期待に応えられるように練習を重ねていきます。

宮本今季はコンサートマスターが代わり、私を含めた団員の底力が試される演奏会となります。特定の個人に依存しない、みんなで作る宙の音楽が一際輝く回になると思うので、ぜひその瞬間を見に来てください。

——本日はありがとうございました!

(インタビュー・構成/交告承已)

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マンドリンアンサンブル宙

神奈川拠点の若手アンサンブル

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コンサートスクウェア事務局

中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています