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「暮らしの中のクラシック」を目指して——福田ひろみがサロンコンサートで描く音楽の未来

2025/12/02

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週末の朝、モーツァルトのフルート協奏曲とコーヒーマシンの音で目覚める——そんな音楽に満ちた家庭で育ったヴァイオリニスト・福田ひろみさんは、「クラシックを、もっと近くに。暮らしの中のクラシック。」をコンセプトに、渋谷でサロンコンサートを継続開催しています。

「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」のメンバーとして全国を回った経験から学んだ「クラシックを身近に感じてもらう力」を活かし、3ヶ月に1回のペースで開催してきたリサイタルシリーズは、12月7日の公演で第16回を迎えます。

継続することの意味、そして「聞く」から「弾く」へとクラシックの裾野を広げる取り組みについて、福田さんの想いを伺いました。

福田ひろみ
ヴァイオリニスト。1993年8月23日生まれ、兵庫県出身。東京音楽大学及び大学院首席卒業。原田幸一郎氏に師事。第85回日本音楽コンクール第3位(2016年)、イザイ国際音楽コンクール第2位(2019年)、IMA音楽賞、松方音楽賞奨励賞など多数受賞。2023年まで、高嶋ちさ子12人のヴァイオリニストのメンバーとして活動。現在、各地の音楽祭への出演に加え、読売日本交響楽団、東京都交響楽団などでエキストラ奏者を務める傍ら、東京音楽大学指揮科特別アドバイザーとして後進の指導にも携わる。東京都渋谷区で「福田ひろみヴァイオリン教室」を主宰。月刊ゴルフトゥデイ雑誌イメージモデルも務める。

——福田さんは、サロンコンサートの活動を長く続けられていますが、そもそも始めたきっかけについて教えてください。

福田コロナが明ける少し前に、とある女性ピアニストとデュオのリサイタルをする予定だったのですが、初演の5日前にそのピアノの方がコロナの疑いで出演できなくなってしまったんです。その方のご紹介で、急遽ピンチヒッターとして来てくださったのが、現在のサロンコンサートの活動を一緒に行っているピアニストの大越崇史さんでした。

最初はそういったトラブルからの出会いだったのですが、彼自身がヴァイオリンとよく演奏しているということもあって、これから定期的にサロンで発信をできたらという話で意気投合したのがきっかけです。

もう一つ大きな影響を受けたのが、大越さんが共演していらっしゃるNHK交響楽団の白井篤さんという方のサロンコンサートでした。若い頃からずっと継続してサロンコンサートをやっていらして、新しい曲に挑戦する熱意や、サロンならではのお客様との対話に、すごく惹かれました。

そして、自分も同じようにやってみたいと思ったんです。

——次回でサロンコンサートは第16回目となりますが、毎回のプログラム構成で大切にされていることはどんな点ですか。

福田ひろみリサイタルvol.16

日時:2025年12月7日(日) 14:00開演

場所:渋谷美竹サロン(東京都)

詳細:https://www.concertsquare.jp/blog/2025/202509267166992.html


福田ひろみとピアニスト大越崇史によるリサイタルシリーズ第16回「イタリア音楽の旅」では、レスピーギのヴァイオリンソナタやストラヴィンスキーのイタリア組曲、プッチーニの「私のお父さん」など、多彩なイタリア作品を余すところなくお届けします。繊細かつ雄大な演奏を通じて、イタリア音楽の魅力を深く味わうひとときをお楽しみください。さらにご来場特典として次回コンサート割引もございます。

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福田お客様に毎回新しい発見と楽しみを提供することを一番大切にしています。

継続することによって毎回を楽しみにしてくださるお客様が増えてきたので、皆様からリクエストを募って演奏することも多いです。

最近は国別のテーマを設けるようにしています。これまでベートーヴェンやブラームスのヴァイオリンソナタ全曲演奏なども行いましたが、12月のコンサートはイタリアの曲に特化しています。その前はフランス、その前がドイツで、来年はロシアの曲を予定しています。

何回も来てくださるお客様が飽きてしまわないように、何度でも楽しいと思ってもらえるように、プログラムを考えています。

——お客様からの反響で印象的だったことはありますか。

福田サロンならではの、小さなヴァイオリンの楽器から生まれる音量やスケールの大きさ、迫力に結構驚かれることが多いです。あとは音色をすごく褒めていただけることが多くて、「息遣いを一緒に感じられる」と言っていただけることもあります。

音色については、私の演奏スタイルかもしれませんが、「温かみのある厚めの音色」だと言われることが結構多いですね。音色は弦楽器ならではの一番作れるものだと思っていて、幼少期の頃から一番自分が大切にしている部分です。

自分の師匠によって、音色に個性や癖がつくことがあると言われるのですが、私は恩師の原田幸一郎先生の影響を深く受けていると思います。実際、演奏を聞いた方から「原田先生の生徒だと思った」と言われたこともありました。

——福田さんはかつて、高嶋ちさ子さんの12人のヴァイオリニストとしても活動されていましたよね。その際のご経験から学ばれたことについてもお聞かせください。

福田クラシックの質を保ちながら裾野を広げる「身近なクラシック」の可能性を学びました。

一般的にクラシックは敷居が高く、取っつきにくいものと思われがちです。しかし、ちさ子さんとの活動で実感したのは、クラシックを身近に感じてもらう力の大きさでした。音楽の質は決して下げることなく、より多くの人にクラシックの魅力を届けるというアプローチに大変共感しました。

クラシックは本来、そんなに堅苦しいものではありません。もっと多くの人にその良さを身近に感じていただきたいという思いが、サロンコンサートを始める大きなきっかけにもなりました。

私が大切にしているのは「暮らしの中のクラシック」という考え方です。

ちさ子さんの12人のヴァイオリニストでは、トークを交えながらの演奏会が特徴的でした。自分のコンサートでもそうしたスタイルを取り入れていますし、お客様からのリクエスト曲を演奏するというのも、当時の活動から学んだアプローチの一つです。

——「暮らしの中のクラシック」というのは、素敵なテーマですね。このテーマを掲げるようになった原体験はあるのでしょうか。

福田幼い頃から音楽が日常に溶け込んだ家庭環境で育ったことが、この考え方の原点です。

母は音大のピアノ科を卒業して、自宅でピアノ教師をしていました。父は演奏はできませんが、レコードやオーディオが大好きで、小さい頃から週末の朝はモーツァルトのフルート協奏曲とコーヒーマシンの音で目覚める、そんな生活でした。

ただ、中学生になるまで、自分が音楽家になりたいという明確な意志は特にありませんでした。高校も音楽科ではなく、兵庫県の御影高等学校の普通科に進学しています。当時もコンクールは受けていましたが、音楽の道に進むか一般的な進路を選ぶかで悩んでいました。

でも振り返ると、クラシックが当たり前のように家庭に流れている環境の影響は非常に大きかったと思います。

興味深いデータがあるのですが、日本でクラシックに興味があるという方は一定数いる一方で、実際に聞く人口は非常に限られているという調査結果があるそうです。

例えば、趣味のゴルフを通じて知り合った方々が、コンサートに足を運んでくださったことがありました。コンサートでクラシックを聞く敷居を下げて、気軽に聴ける「暮らしの中のクラシック」という感覚を多くの方に持っていただきたくて、サロンコンサートの定期開催を続けています。

——サロンコンサートを継続する中で、やりがいと大変だったことについて教えてください。

福田やりがいは音楽を通じた循環の場が生まれていることで、大変なのはレパートリーの拡充です。

例えば、私の生徒がコンサートを楽しみにしてくれていたり、逆にコンサートに来ていただいた方が生徒になってくださったりと、音楽を中心とした循環の場にもなっていることが嬉しいです。

また、普段なかなかプログラムに組まれることのない楽曲でも、お客様からのリクエストに応えて演奏することで、「聞いてみたかった曲をここで聞くことができた」と喜んでいただけることも大きなやりがいです。

一方で大変な部分は、継続にはプログラムのレパートリーが相当数必要になることです。大学までのコンクールや授業で学ぶ曲数は非常に限られています。この年齢になるとオーケストラでの演奏活動がメインになり、ソロだけの活動は難しくなって、ソロ曲のレパートリーはなかなか増えていきません。

ただ、クラシックは生涯勉強を続けるものだと考えています。過去の作品を再現するのがクラシックですから、5年前に演奏した楽曲を楽譜から取り出して今改めて弾くだけでも、非常に勉強になります。

もう一つ大変なのが集客ですね。現在もプロモーションに関しては、試行錯誤している状況です。

——年4回ほどの頻度でコンサートを開催するのは簡単なことではないと思いますが、継続のモチベーションはどこにありますか。

福田毎回定期的に来てくださっているお客様から「次回も楽しみにしているね」と言っていただけることですね。お客様に喜んでいただけると、やはり嬉しい気持ちになります。

そして、大越さんと一緒にデュオを組めているということです。ヴァイオリンのレパートリーが増えるということは、ピアニストもすごく負担が大きいのですが、彼とは同じモチベーションを持って、同じ方向性で一緒に取り組めています。

——サロンコンサートを通じて「暮らしの中のクラシック」を実現されていますが、さらに「聞く」から「弾く」への発展についても取り組まれているそうですね。

福田はい、クラシックを身近に感じていただく次のステップとして、実際に演奏する楽しさも知っていただきたいと考えています。

ヴァイオリンを「聞く」体験を経た方に、「弾く」という体験もしていただきたいんです。ヴァイオリンはハードな習い事だと一般的に思われています。確かに親御さんのサポートなどは必要ですが、実際は金額的にも指導環境的にも、想像よりも始めやすいんです。

実は最近はヴァイオリンのレンタルもあって、月々2,000円程度で始められます。意外と身近な楽器なのですが、あまりそれが知られていないという点が課題です。

ヴァイオリンを演奏する方が大人も子どもも含めて増えていけば、自然とコンサートに足を運ぶ人口も増えていくと考えて、音楽教室にも力を入れています。

——教室でのレッスンでは、どのような工夫をされていますか。

福田基礎をしっかり身につけながらも、生徒が弾きたい曲を大切にする二本立てのレッスンを心がけています。

クラシックは難しい曲が多いので、基礎は確実に教える方針です。ただそれだけでなく、生徒自身が弾きたい曲も並行して進めています。学ぶべき課題曲と、やりたい楽曲の両方を扱うことで、モチベーションを保ちながら技術を向上させています。

また、お子さんやクラシック入門の方は、誰かと一緒に演奏したいと思われることが多いので、生徒同士でデュオを組ませています。さらに合奏も取り入れていて、ヴァイオリンとチェロに加えて、最近はヴィオラまで弾けるようになった生徒も増えたので、教室内で本格的なアンサンブルが楽しめるようになっています。

——幅広く活動されている福田さんですが、今後のビジョンについてもお聞かせください。

福田演奏家・企画者・教育者の3本柱で活動を展開し、若手演奏家の発表の場を作ることが目標です。

学生が自分で企画してコンサートを開催するのは難しいので、将来的にはそうした方々の発信の場を作れたらと思っています。まだ実現できていませんが、サロンコンサートのゲストとして学生やヴァイオリニストを目指している方をお招きして、一緒に共演する場にしていきたいと考えています。

こうした考え方になったのは、現在東京音楽大学指揮科で特別アドバイザーを務めさせていただいているのですが、教授の広上淳一先生の影響が大きいです。非常に多忙でありながら各地でコンサートを行い、指揮科の学生だけでなく私のような弦楽器の学生まで目をかけてくださる、その教育者としての姿勢に深く感銘を受けました。

最終的には教室をより大きくして、もっと気軽にヴァイオリンを習い事として始められる環境を作ることが目標です。

——最後に、コンサートスクウェア読者の方へメッセージをお願いします。

福田ヴァイオリンをこれから始めてみたい方、興味があるという中学生までのお子様を、次回のリサイタルに無料でご招待しています。ヴァイオリンを知るきっかけになっていただけたら幸いです。

今後もサロンコンサートを続けることで、クラシックをもっと身近に感じていただけたらと思っています。

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福田ひろみリサイタルvol.17

日時:2026年3月7日(日) 19:00開演

場所:渋谷美竹サロン(東京都)

詳細:https://www.concertsquare.jp/blog/2026/202511126508721.html


ヴァイオリニスト福田ひろみとピアニスト大越崇史が織りなすリサイタルシリーズ第17回では、プロコフィエフのヴァイオリンソナタ第1番をはじめ、チャイコフスキー「懐かしい土地の思い出」やラフマニノフの「ヴォカリーズ」など、ロシア音楽の名曲を余すところなくお届けします。大人から学生まで幅広い層に親しまれる名作を、美しい音色と繊細な表現でお楽しみください。次回公演の割引特典もご用意しております。

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——福田さん、本日はありがとうございました!

(インタビュー・構成/松永華佳)

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中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています