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「やめても、帰ってくればいい」——いつでも帰ってこられる場所を守り続けるWind Ensemble GRITの挑戦

2026/05/13

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「吹奏楽をやっていたけれど、いつの間にか離れてしまった」——ライフステージが変化するタイミングで音楽から遠ざかったという方は少なくないでしょう。

Wind Ensemble GRITは、そんな人たちが「いつでも帰ってこられる場所」を目指して2021年に生まれた吹奏楽団体です。「やり抜く力」を意味する心理学用語「GRIT」を団体名に冠し、音楽を続けることと、音楽を極めることの両立を「ずっと、ぐりっと。もっと、ぐりっと。」というコンセプトに込めています。

代表・城間礼音さんと、音楽面を担う辻村さんに、団体の哲学と6月7日に開催する「Pops "SUMMER" Concert 2026」への思いを伺いました。

Wind Ensemble GRIT
2021年創設。首都圏を中心に活動するアマチュア吹奏楽団体。団員約70名が所属し、20代を中心とした構成が吹奏楽団の中でも珍しい特徴のひとつ。「ずっと、ぐりっと。もっと、ぐりっと。」をコンセプトに、ライフステージが大きく変化する世代が音楽を長く続けられるコミュニティづくりと、限られた時間の中で音楽を本気で追求できる場の提供を両立している。定期演奏会・ポップスコンサート・アンサンブルコンテストの主催など年間を通じて多彩な活動を展開。

——まずは、Wind Ensemble GRITがどのような団体なのかを教えてください。

城間「ずっと、ぐりっと。もっと、ぐりっと。」というコンセプトのもと活動している吹奏楽団体です。

団体名の「GRIT」とは、心理学者アンジェラ・ダックワースが提唱した概念で、ビジネス・スポーツ、分野問わずに成功している人の共通点である「やり抜く力」、それらを構成する情熱と粘り強さを意味する言葉です。

勇気(Guts)、復元力(Resilience)、主体性(Initiative)、執念(Tenacity)の頭文字でもあります。その言葉が示す通り、何があっても音楽と向き合い続ける人たちが集まる場所として、Wind Ensemble GRITは生まれました。

私たちはコロナ禍の時期に立ち上げた団体で、ちょうどその頃、人とのつながりが一度途切れてしまった経験が出発点にあります。ただ、コミュニティが途切れるきっかけはコロナだけではありません。就職活動、社会人になる、結婚する——私たちの団員の中心である20代は、ライフステージが最も大きく変化する世代でもあります。

そういった節目のタイミングで、音楽から離れてしまう人は少なくありません。

吹奏楽に限らず音楽全般に言えることだと思うのですが、一度離れると帰ってきづらい。ブランクの問題もありますし、戻ってきても座席がないということもある。そもそも「吹奏楽団に入り直す」ということが選択肢に上がらないほど忙しい社会人や学生もいます。

だからこそ、いつでも帰ってこられる環境をつくりたい。それが「ずっと、ぐりっと。」に込めた思いです。

——なるほど、音楽を「ずっと」続けられるようにという思いを込めているんですね。一方で「もっと、ぐりっと。」にはどのような意味があるのでしょうか。

城間ゆるく続けるだけでなく、限られた時間の中でも音楽を究めていこう、そんな意味を「もっと、ぐりっと。」に込めています。

忙しい社会人や学生だからこそ、短い時間でも本気で探究できる場を提供したいと考えています。この「ずっと」と「もっと」を、私と辻村で役割分担しながら実現しています。私はどちらかというとコミュニティづくりの側面に、辻村は音楽面の改革により強くコミットしています。

辻村私が入団したのは去年ですが、基礎練習のやり方を改革したり、演奏会の選曲の方法を見直したりということを通じて、「もっと、ぐりっと。」の部分を担っています。城間さんが居心地の良いコミュニティの土台をつくってくれているからこそ、音楽の部分に集中できているという感覚があります。

——ただ、続けるだけではなく、しっかり音楽と向き合うことも大事にしようというコンセプトということですね。「ずっと、ぐりっと。もっと、ぐりっと。」を体現しているような団員のエピソードはありますか。

城間実際、ブランク明けで入団してくれた方が、団員約70名のうち5分の1ほどいます。高校生ぶりに楽器を手にした方や、5年ぶりに音楽を再開したという方も珍しくありません。最初は苦労される方もいますが、周りがフォローしながら一緒に成長していける仕組みを少しずつ整えています。

一度GRITを離れた後に戻ってきてくれた方もいますし、離れてもどこかでつながり続けて、また一緒の演奏会に参加してくれた例もあります。いつでもみんなを迎えられる場所でありたいと思っているので、それが少しずつ形になってきているのかなと感じています。

GRITの団員に共通しているのは、人生のどこかで何かに魂を燃やしてきた経験を持っているということです。音楽でも、それ以外のことでも。そういう方々がGRITのコンセプトに共鳴して飛び込んできてくれることが多いですね。

また、複数の団体を掛け持ちするバイタリティあふれるメンバーが多いのですが、それもGRITらしさのひとつかもしれません。

——忙しい社会人や学生が無理なく続けるために、練習面などで何か工夫していることはありますか。

辻村他の団体とも兼任しているメンバーが多い関係で、土曜の午前中に練習があることも多いのですが、それが結果的にすごく良い効果を生んでいます。

平日はみんな仕事や学業があって、土曜の午前中は「一週間の疲れを癒やすために、そのままお昼まで寝ていたい……」と、ついダラダラ過ごしてしまいがちな時間帯です。そのため、その時間に練習が入っても、土日の時間が奪われた感覚が全くない。むしろGRITの練習があった方が土日を有効活用できている人もいます。

——定期演奏会とはまた別の「Pops "SUMMER" Concert 2026」を6月7日に開催予定ですが、今回のコンサートはどのような経緯で企画されたのでしょうか。

Pops “SUMMER” Concert 2026

日時:2026年6月7日(土) 14:00開演

場所:大田区民プラザ 大ホール(東京都)

詳細:https://www.concertsquare.jp/blog/2026/202602172024339.html


Wind Ensemble GRITが吹奏楽ポップスを、塗り替える。そんな想いで特設のポップス演奏会を企画いたしました。

第一部では「かつて愛した曲では、新しい光を。」を、第二部では「初めて出会う曲では、震えるような衝撃を。」をコンセプトに曲を据え、吹奏楽ポップスの可能性を最大限引き出します。

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城間定期演奏会とは別に、より多くの方に私たちの演奏を知っていただくという意味合いで、ポピュラーミュージックを取り上げるポップスコンサートを企画しました。ただ、単に聴き馴染みのある曲を並べるだけでなく、新しい吹奏楽ポップスの形を知っていただいて、こういうものもあるんだと感動してもらいたい。その思いが、今回のコンサートの出発点です。

——コンサートは第一部「かつて愛した曲では、新しい光を。」、第二部「初めて出会う曲では、震えるような衝撃を。」という構成になっていますね。それぞれどのような思いを込めていますか。

辻村実はこの構成を考えたのは、吹奏楽界隈で「吹奏楽でポップスをやるのはダサい」という声を耳にしていたことがきっかけで、そういう声をギャフンと言わせるようなコンサートにしたいという気持ちを込めています。

第二部はその思いを直接ぶつける場所で、吹奏楽のために書かれた本物のジャズやポップスを取り上げています。吹奏楽のために書かれたポップスはダサくない、ということを証明したいんです。

一方で、第一部は、『SPY×FAMILY』やAKB48の楽曲など、みなさんが知っている曲を並べています。一見すると高校の定期演奏会でもよく見るような曲目に見えるかもしれませんが、アレンジの格好良さにこだわって選曲しました。

知っている曲でも、吹奏楽のポップスはここまでかっこよくできるということを見せたかったんです。

城間「かつて愛した曲では、新しい光を。」というタイトルはまさにそこから来ています。馴染みのある曲を、GRITの演奏で新しい視点から届けたいという思いを込めました。

——なるほど、「カッコ良い吹奏楽のポップスを見せる」ことがコンセプトになっているんですね。選曲のプロセスについても聞かせてください。どのように今回の曲目が決まったんでしょうか。

城間通常は団員からやりたい曲を募集して、実現可能なものの中から選んでいくというスタイルですが、今回は先にコンサートのコンセプトを決めました。そして、コンセプトに合う曲を団員から募集し、その中から選曲するという、珍しい順番で組みました。

——コンセプトだけでなく、曲決めの方法も挑戦的な進め方だったんですね。ところで…第一部の曲目は、どれも難易度が高そうですね。

城間そうなんです。一見すると聴き馴染みのある曲が並んでいるように見えますが、実は作曲家・編曲家が奏者に遠慮なく要求を詰め込んだ曲ばかりで、演奏技術の面でも非常に高いレベルが求められます。

お客様に知っている曲で楽しんでいただきながら、GRITとしても音楽的に成長できる。そういう曲を意識して選んでいます。

——GRITは、設立5年目にして第7回定期演奏会を予定するなど、非常にハイペースで活動されていますが、その原動力はどこにあるのでしょうか。

城間団員一人ひとりがこだわりを持って運営に関わってくれているところが大きいと思います。広報や人事など、それぞれが自分の領域で考え抜いて動いてくれています。トップダウンではなく、各々が情熱を持って動いているからこそ、このペースで活動できています。

辻村音楽面でいうと、団員一人ひとりがやりたい音楽を持って積極的に演奏しているので、練習の最初はバラバラになることも多いんですが、各自がこだわりを持っているからこそ生まれる音楽があります。それがまた次の演奏会への原動力になっていると思います。

——まさに、「もっと、ぐりっと。」が体現されていますね。音楽面での今後の展望についても聞かせてください。

辻村レパートリーの幅を広げていきたいです。ポップスコンサートでは本物のポップスを、定期演奏会では吹奏楽の古典やオーケストラの編曲もの、そして最新の吹奏楽曲も演奏できる。そういう幅広いアプローチができる団体にしていきたいです。

もう一つ、練習面での改革も続けていきたいと考えています。社会人や学生は毎日楽器を吹き続けることが難しい。

そこで注目しているのがソルフェージュ※1 的な視点です。楽器を持たなくても楽譜を頭の中でイメージできれば、自然と演奏に反映されていく。

短い練習時間の中でも全員が満足できる演奏ができるよう、そういった仕組みを整えていきたいと考えています。

※1 楽譜の読み書き、視唱、聴音、リズム練習を通じて、音楽の基礎能力を養う訓練。フランス語に由来し、楽譜を正確に理解・表現する力を鍛え、演奏力向上や初見演奏のスピードアップ、音楽的な自律に役立つ。

——代表の城間さんは、GRITを今後どのような団体にしていきたいですか。

城間「ずっと、ぐりっと。」というところはぶらさずに、より若い世代にも受け入れられる運営基盤を整えていきたいと考えています。部活動の地域移行化が進む中で、楽器を吹ける場所や機会がどんどん減っていく。そういう時代に、吹奏楽に関わる人たちがいつでも戻ってこられるデフォルトのコミュニティとして在り続けたいです。

辻村GRITという言葉には「粘り強さ」という意味がありますが、私たちにとってのGRITは細く長く続けるということだけではないと思っています。練習に来るたびに、その一週間を頑張れたとか、次の一週間も頑張れると感じてもらえる。GRITでの時間が、音楽の外でも誰かの支えになれたら嬉しいですね。

城間家庭や仕事など自分が主軸とするものがある中で、第3の場所としてGRITを選んでもらいたいです。その場所を守り続けることが私の役割です。「やめても、また帰ってくれば良い」というくらいの気持ちでいつでも迎えられる場所を、これからもつくり続けていきたいですね。

——最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

城間かつて吹奏楽をやっていたけれど、忙しくて離れてしまったという方にこそ、ぜひGRITのことを知ってほしいです。ブランクがあっても、ライフステージが変わっていても、帰ってこられる場所があります。

6月7日の「Pops "SUMMER" Concert 2026」では、そんな私たちの音楽を直接聴いていただける機会です。まずは演奏会に足を運んでいただけたら嬉しいです。

辻村「吹奏楽のポップスってこんなにかっこいいんだ」と思っていただける演奏をお届けします。ぜひ大田区民プラザへお越しください。

——​​城間さん・​​辻村さん、本日はありがとうございました!

(インタビュー・構成/松永華佳)

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中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています