PR
ログイン/登録
通知
第5回上野⇄浅草音楽祭2026in日暮里
3人のバッハが紡いだ新しい風
2026/03/31
「クラシック音楽の『お堅い』イメージを崩したい」 そう語るのは、東京都多摩地域を拠点に活動する「コンセール・オランジュ」主宰の石毛美穂さん。 元助産師という異色の経歴を持つ彼女は、コロナ禍を機に「好きなことで生きる」選択をし、3人で弦楽アンサンブルの活動を本格化させました。 毎回、プロの演奏家をゲストに招き、バロックから近現代まで幅広いレパートリーで質の高いコンサートを企画。フライヤーデザインから選曲、チケット管理まで完全自主運営するそのプロデュース力は、演奏家たちからも「一緒にやりたい」と声がかかるほど。 2026年4月11日、所沢ミューズで開催される「カウンターテナーと弦楽の世界」では、日本初演となるヘンデルの『オーボエ・ダモーレ協奏曲』をはじめ、カウンターテナーの独特な深い響きと弦楽の美しい調べが織りなす、特別なひとときが待っています。 「社会人生活に疲れた3人」が始めた小さな挑戦について、石毛さんにお話を伺ってみました。
——まずは、コンセール・オランジュがどのような団体なのか教えてください。
石毛私を含めて3人で活動している弦楽の団体です。メンバーは私がヴィオラ、佳奈がヴァイオリン、由紀夫もヴァイオリンという編成です。 基本的には有料コンサートを開催していて、その都度プロの演奏家をゲストとしてお招きして演奏会を作り上げています。私たちから演奏家の方々にオファーさせていただくことがほとんどですが、演奏会を重ねるごとに「私も出してほしい」とプロの演奏家の方から直接ご依頼をいただくこともあります。 私たちはセミプロの部類なので、声をかけていただけるのは、正直ありがたく感じています。 拠点は東京都の多摩地域で、「東村山をアートな音楽で溢れる都市に」という思いを持って活動しています。コンサートは数か月に1回ほど開催していますが、大きな公演の前には、プロモーションを兼ねて近隣の小さな会場でプレコンサートを行うこともあります。
——3人で音楽活動を本格的に始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
石毛「好きなことをやって生きていきたい」と思ったのが大きいです。 実は、もともと私は病院で助産師として働いていました。ただ、コロナ禍で音楽をやるどころではなくそこから3年ほど全く楽器を弾けない時期がありました。 その間に「この後の人生、どうやって生きていこうか」と考え、やはり好きなことをやって生きていきたいという思いが強くなったんです。それから、音楽を中心に活動することを決めました。 他の2人も社会人として働いているのですが、趣味だった音楽をガッツリやってみたいということで始まりました。言ってみれば、「社会人生活に疲れた3人が集まって作った団体」なんです。
——コンセール・オランジュは、毎回の演奏会のフライヤーのデザインが非常に印象的ですよね。
石毛これまでのフライヤーは、全て私がCanvaで作っています。フライヤーは演奏会の顔になるので、かなりこだわっています。 次の4月の演奏会では、ヴィヴァルディの「春」を演奏するのと、開催時期が春の時期ということもあって、桜やピンクを使った柔らかいイメージにしました。 クラシック界隈では、結構お堅い感じのフライヤーが少なくないんです。格式高いというか、硬い印象のものが多くて。 私たちの演奏会は、もっと親しみやすいイメージで皆さんに届けたいと思っています。ですから、クラシック音楽に馴染みがない方でも、「これなら行ってみようかな」と思っていただけるようなデザインを心がけています。
コンセールオランジュ主催 「カウンターテナーと弦楽の世界」
日時:2026年4月11日(土) 13:00開演
場所:所沢ミューズ(埼玉県)
詳細:https://www.concertsquare.jp/blog/2026/202505306.html
カウンターテナーをお招きします。イタリアオペラを中心としたプログラムでお楽しみください。また今回の演奏会では、バロック音楽をモダン楽器で演奏致します。 そして、日本初演となる「ヘンデル作曲 コンチェルトパスティッチョ」をお聴き頂けます。 この曲は、オーボエ・ダモーレのソロと弦楽+チェンバロの曲で、リトアニア🇱🇹より楽譜を調達しました。 日本の演奏会では初の試みとなります。 どうぞお楽しみください。
——クラシックコンサートのフライヤーはモノトーンやシックなデザインが多いので、新鮮で目に留まりやすいですね。毎回のコンサートのコンセプトや演奏する曲はどのように決めているのでしょうか。
石毛完全に私の好みです(笑)。最近は古楽、バロック寄りの選曲が多いかもしれませんね。ただ、モダン楽器を使うという演奏スタイルは毎回共通しています。 選曲を考える時は、その時に一緒に演奏していただけるプロの方との相性も大切にしています。また、トレンドも意識していて、例えば去年はショパンコンクールの年だったので、ショパンコンクール出場経験者をお呼びして、ショパンの曲を中心にプログラムを組みました。
——2026年4月11日開催予定のコンサートのテーマは「カウンターテナーと弦楽の世界」ですが、まずは、カウンターテナーの魅力について教えてください。
石毛カウンターテナーとは、ファルセット(裏声)を用いて、女性のアルトやソプラノに相当する高音域を歌う男性歌手です。 みなさまもよくご存じのジブリ映画『もののけ姫』の主題歌を歌われた、米良美一さんは、日本でかなり有名なカウンターテナーです。 カウンターテナーの魅力としては、独特の音の深みや太さがあることです。一般的な男性パートのテノールやバリトンは低めの音域を担当することが多いですが、それよりも高めの音域を歌うカウンターテナーには、他にはない特別な響きがあり、初めて聴く方にも親しみやすくすっと耳に入るのではないでしょうか。
——「カウンターテナーと弦楽の世界」というコンセプトは、どのようにして生まれたのですか。
石毛一番最初のきっかけは、カウンターテナーの新田壮人さんに私からお声掛けした所から始まりました。 新田さんからも「カウンターテナーに焦点を当てた演奏会はあまりないので、ぜひやりましょう」というお話をいただき、どんどん形になっていきました。 今回はまたオーボエ・ダモーレの奏者、小花恭佳さんをお招きして、ヘンデルの『コンチェルト・パスティッチョ(オーボエ・ダモーレ協奏曲)』を日本初演する予定です。 オーボエ・ダモーレという楽器自体、日本では演奏頻度が少ないジャンルですが、この曲は特に珍しくて、楽譜が日本では手に入らなかったので、リトアニアから楽譜を取り寄せました。かなり手間がかかりましたが、貴重な曲を日本で初めて演奏できるというのは、本当に意義深いことだと思っています。
——今回はバロック音楽を現代の楽器で演奏する「バロックとモダンの融合」も意識されているとお聞きしました。プログラム全体の構成も含めて、聴きどころを教えてください。
石毛バロック音楽には、その時代専用の楽器があるんです。いわゆる「古楽器」と呼ばれるものです。ただ、今回は、現代の普通のヴァイオリンなどを使うモダンスタイルで演奏します。 300年以上前の、日本で言えば江戸時代くらいの音楽と、現代のスタイルをうまく調合させる。古い時代の音楽の良さを残しつつ、現代の楽器が持つ響きの豊かさも活かすという、バロックとモダンの融合を目指しています。 プログラム全体としては、カウンターテナーの楽曲だけでなく、ヴィヴァルディの『四季』より「春」「夏」といった有名な曲も入れています。お客様に楽しんでいただけるように、親しみやすい曲と珍しい曲をバランスよく配置しました。 カウンターテナー、オーボエ・ダモーレの日本初演、そしてヴァイオリンのソロも聴ける、かなり盛りだくさんの内容です。自分たちで言うのもなんですが、非常にお得だと思います(笑)。ぜひ多くの方に聴きに来ていただきたいですね。
——最後に、この記事を読んでコンサートに興味を持った方、一緒に演奏したいと思った方に向けてメッセージをお願いします。
石毛私たちと一緒に演奏会を主催する形で演奏したいという方がいらっしゃれば、もちろん大歓迎です。プロの方でも、すでに引退された方でも、音楽で生計を立てたいと考えている方でも。お客様が喜んでいただけるようなコンサートを一緒に作っていただける方でしたら、プロ・アマ問わずお声がけいただけましたら幸いです。 4月のコンサートは、所沢開催ということで、都心からややアクセスの悪い場所ではありますが…来ていただいて後悔ないような演奏会を作りますので、ぜひ足を運んでいただきたいです。 春の始まりに、素敵な音楽をお届けいたしますので、会場でお待ちしています。
(インタビュー・構成/松永華佳)
中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています