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室内楽の環 音楽祭 2026「昼公演+夜公演」
オーケストラ・チェルカトーリ 第7回演奏会
Singe-, Spiel- 歌とリコーダーによるテレマンのノスタルジー
2026/06/10
島根県西部、石見地方。人口減少が進むこの地に、音楽大学を卒業した若手音楽家たちが続々と移り住んでいます。 彼らを呼び込んだのは、一般社団法人石見音楽文化振興会が主宰するハイブリッドウインドオーケストラです。毎年5,000人以上が音大を卒業しながら、プロとして音楽だけで食べていける人はごくわずかという社会課題に向き合い、「音楽家のキャリア」と「地方への移住施策」を掛け合わせるという全国でも珍しい取り組みを続けています。 大阪から、東京から、静岡から——島根に縁もゆかりもなかった音楽家たちが、なぜこの地を選んだのか。そして、音楽家たちが街に溶け込みながら地域に「音楽の種をまく」活動は、今どのような実を結んでいるのか。 代表理事・田中さん、運営担当・黒田さん、そして今年4月に移住したばかりのトロンボーン奏者・吉田さんにお話を伺いました。
——ハイブリッドウインドオーケストラがどのような団体なのか教えてください。
黒田島根県西部の石見地方を拠点に、音楽大学や専門学校を卒業した若手音楽家がこの地に移り住みながら、演奏活動を行っている吹奏楽団体です。主宰は一般社団法人石見音楽文化振興会で、現在約20名の音楽家が浜田市・江津市などに暮らしながら活動しています。 コンサートの企画・開催のほか、地域からの依頼演奏、中高大学吹奏楽部への指導、小学生バンドの立ち上げと運営など、地域の音楽文化の振興に幅広く取り組んでいます。
——音楽家に特化した移住施策や地域活性化など、オーケストラとしては非常にユニークな取り組みをなさっていますが、どのような経緯で実施することになったのでしょうか。
田中きっかけは、学校現場で吹奏楽部を持っていた頃の経験です。活動が活発になるにつれて音大を目指す生徒が増えてきたのですが、卒業後にプロとして食べていける人がほとんどいないという現実に直面しました。 当時調べたところ、毎年5,000人以上が音大を卒業しているにも関わらず、本当に音楽だけで生計を立てられる人はごくわずかで、これは社会課題だと感じました。 せっかく専門的に音楽を学んでも、その先のキャリアの間口があまりにも狭い。その状況を少しでも変えられるプラットフォームを島根で作ったら面白いんじゃないかと思ったんです。 そして、2015年に一般社団法人石見音楽文化振興会を設立して、少しずつ音楽家をこちらに呼び込む仕組みを作り始めました。
——現在の団員の皆さんは、島根出身の方が多いのでしょうか。
黒田実は逆で、島根と全く縁のなかった地域からのIターンの方が断然多いです。静岡、広島、札幌から来た方と、出身地は様々です。私自身も東京から島根に移住して、今年で5〜6年目になります。この春も新たに何名かが移住してきてくれました。6年も経てば、この島根で出会って結婚したメンバーも出てきていて、根を張って暮らしている人たちが増えてきています。
——島根に全く縁のなかった方々が移住を決意するのには、どのような理由があるのでしょうか。
吉田毎回同じメンバーで音楽を積み重ねていける楽団として存在しているというところに、強く惹かれたのが一番の理由です。 私は静岡でトロンボーンのフリーランスとして活動していたのですが、普段は一人でレッスンや演奏などの仕事をして、吹奏楽やオーケストラなどの演奏会には、エキストラとして出演していました。もちろん、フリーランス仲間と集まって演奏会をすることもありましたが、常設の楽団は難しい。フリーランスの活動に限界を感じ始めた頃、ハイブリッドウインドオーケストラを見つけました。 また、島根県は行ったことのない場所だったので、好奇心がありました。実際に訪れてみたらとても静かで落ち着いた綺麗なところで、それも後押しになりました。
——実際に移住されてみて、印象に残っていることはありますか。
吉田国道9号線という海沿いを走る道路があるのですが、島根県は日本海に面した西側にあるので、夕日がとても綺麗なんです。静岡にいた頃は太平洋から朝日を見ていたのですが、日本海の夕日はまた全然違う。凛々しくて、落ち着いた、クールな感じがあり、それがとても印象的でした。
——皆さんは一般社団法人石見音楽文化振興会に所属し、演奏活動と並行して別の仕事もされているとのことですが、普段はどのような生活を送られているのでしょうか。
黒田私の場合、今日の午前中は浜田高校の入学式で吹奏楽部の指揮を振っていました。午後からは放課後デイサービスの職場で子供たちと関わっていて、同じハイブリッドのメンバーが3人同じ職場で働いています。 今日はちょうど音楽遊びの時間があって、ホルンのメンバーがマウスピースをゴムホースにつけてブーっと鳴らして子供たちを喜ばせたりしていました。音楽のスキルが自然と生きる場面が多いですね。
——演奏活動のお話もお聞かせください。皆さんのコンサートはどういった点が特徴的ですか。
黒田定期演奏会のような大きなコンサートだけでなく、地域のカフェや各地のまちづくりセンター、夏祭りの余興など、多様な形で演奏機会を作っています。メンバー2人でデュオコンサートを開くこともありますし、場所を見つけて自分たちで演奏の機会を増やしていくという取り組みもしています。 大きなコンサートホールから地域の小さな集会所まで、あらゆる場所で音楽の種をまくような活動をしている団体です。
——過去のコンサートの演目を拝見したところ、コンセプトやセットリストの組み方が毎回大きく異なる印象を受けました。どのように決めているのでしょうか。
黒田音楽監督の藤重佳久と団員でコンセプトをすり合わせながら決めています。ある時は映画音楽、ある時は大編成の吹奏楽曲、今回はジャズのビッグバンド形式にしようということもありました。 「これがハイブリッドウインドオーケストラだ」と定義できるものがないのが、むしろハイブリッドらしさなのかもしれないと思っています。若手団員の発想とベテランである藤重の経験の掛け算から生まれる、毎回違う音楽を作っている点が私たちの個性です。
——地域密着型のオーケストラということで、やはり観客としては、地域の方が多いのでしょうか。
黒田はい、今では顔見知りのお客様がほとんどといっても過言ではありません。私が指導している浜田高校吹奏楽部のご父兄の方、一緒に活動している合唱団の方、普段働いている職場の方々やそのご家族など。 実際、大ホールの舞台上に立っていても、客席に知り合いの顔が一人ひとり見えるんです。「誰々さんがあそこにいる」と思いながら演奏しているような状態です。 普段一緒に働いている姿や、街で買い物している姿を知っているお客様が、コンサートで演奏している私たちを見て「舞台に立つとすごいね、輝いて見える」と言ってくださる。島根はいわゆる田舎なので、日曜日に買い物に行けばばったり知り合いに会う。 そういう環境だからこそ生まれる距離感と信頼関係は、都会のコンサートホールではなかなか生まれにくいものだと思いますし、それがこの活動を続けていく大きな原動力になっています。
——演奏者としての姿以外の普段の姿を観客が知っているというのは、他の団体にはない、特殊な状態で面白いですね。6月21日に控えている第8回定期演奏会「The吹奏楽王道」についてもお聞かせください。
ハイブリッドウインドオーケストラ 第8回定期演奏会
日時:2026年6月21日(日) 14:00開演
場所:島根県立大学講堂(島根県)
詳細:https://www.concertsquare.jp/blog/2026/202604079562001.html
音楽監督・藤重佳久のタクトが導く至高の響き! 吹奏楽コンクール課題曲からジャズ、ミュージカルまで吹奏楽の魅力を凝縮。 第1部クラシックステージ(2026年度吹奏楽コンクール課題曲など) 第2部ポップス・ジャズ・ラテンステージ(テキーラ、レ・ミゼラブルなど) ※都合により曲目等が変更になる場合がございます。
黒田2026年度のコンクール課題曲やポップスステージなど、吹奏楽ファンの方にはぜひ聴いていただきたいプログラムになっています。会場は島根県立大学の講堂で、前売券は一般2,500円、高校生以下500円です。 島根県西部でこれだけの専門音楽教育を受けた音楽家たちが集まって演奏するコンサートは、この地域では本当に珍しいことです。ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
——最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
田中音楽で島根を盛り上げようという私たちの取り組みに、少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ一度実際に来てみてください。この島根西部で、こんなに面白いことをやっている人間たちがいる。それを肌で感じてもらえたら、きっと何かが変わると思います。
黒田演奏を聴きに来てくださるお客様はもちろん、音楽を続けたいと思っている奏者の方にもぜひ知っていただきたいです。音大を卒業したけれど、音楽だけで生きていく道が見えない。そう感じている方がいれば、私たちの活動が一つの選択肢になるかもしれません。 まずは演奏会に足を運んでいただいて、私たちのことを知っていただけたら嬉しいです。
——田中さん、黒田さん、吉田さん、本日はありがとうございました!
(インタビュー・構成/松永華佳)
中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています