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田母神夕南 ピアノ・リサイタル
2025/06/18
東京・関東を拠点に、リサイタルやYouTubeでの発信など、独自の道を歩みながら深く音楽と向き合ってきたピアニスト・宇田川由紀子さん。 幼少期のオーストリアでの経験、パリへの留学、クラウドファンディングでの挑戦。さらには姉弟での“異色”の共演など、長いスパンで育んできた彼女の音楽人生をお聞きしました。
——宇田川さんがピアノを始められたのは4歳のときだそうですね。
宇田川親戚にピアノを教えている方が多かったこともあって、気がつけばずっとピアノが傍にありました。10歳のときに伯母に連れられてウィーンの講習会に参加したことが最初の大きな転機です。ベートーヴェンがかつて住んでいた家、「ベートーヴェンハウス」で演奏する機会に恵まれ、歴史ある本場の空気を肌で感じることができました。あの頃の記憶は今も鮮明です。
——宇田川さんの原点がそこにあったのですね。
宇田川穏やかで落ち着いた時間の流れがそこにはありました。凄く音楽に集中できる環境でしたね。それまでの日本でのレッスンが厳しいスタイルだったのに対して、ウィーンでは先生と生徒が共に寄り添いながら成長していく感覚で、私にはとても合っていました。ベートーヴェンが散歩したという森を、伯母と一緒に散歩したことも、忘れられない思い出です。
——そして、ピアノ講師を経てフランス・パリへ留学されました。
宇田川エコール・ノルマル音楽院での学びは、音楽と向き合う姿勢を根本から問い直すような時間でした。ピアノの鍛錬だけでなく、“音楽とは何か”を考え続ける日々。異国でひとりで生活するなかで、人としての強さが自ずと養われていった気がします。悩みと一つ一つ向き合いながら、先生方との対話とレッスンを繰り返し、自分の音を深めていくことの大切さを実感しました。
——大変な時期を乗り越え、大事なものを手に入れることが出来たのですね。
宇田川あのころは音楽を「愉しむ」というよりも「頑張る」という感じでした。だけどパリに住めたということは人生を振り返った時に大きな出来事でした。現地の方が公園の芝生の上で寝そべって本を読んでいたりとか、そういう日常的な光景に心を動かされたんです。決して急がず、みな自由に生きていらして。私もそうありたいなと。パリへの留学も、音楽家人生のなかでの転機となる期間だったことは間違いありません。
——宇田川さんのYouTube演奏動画は、再生回数300万回を超えていますね!
宇田川ありがたいことに、多くの方に視聴していただけました。YouTubeを始めたのは、演奏力の向上を図るなかで、自分にできることを探した結果です。動画で発信することで思わぬ反応や出会いも生まれ、音楽の“届け方”について視野が広がりました。本当にそのときの交流が素晴らしかったんです。
——その出会いがクラウドファンディングを通じてのリサイタル開催に繋がったわけですね。
宇田川初めての挑戦で不安もありましたが、無事に18日で達成することができました。支援者の皆さんの存在は本当に心強く、音楽は一人で成り立つものではないと改めて感じました。
——最近では、打楽器「ダルブッカ」を演奏する弟さんとの共演もされていますね。
宇田川そうなんです。ダルブッカという中東系の打楽器と、クラシックピアノの組み合わせ。ジャンルとしては異色ですが、リズムと旋律が実はとても調和するんです。家族だからこそ言葉以上に通じる部分もあって、とても自由で楽しい時間になっています。
——クラシックと中東の打楽器というコラボは本当に珍しいですよね!
宇田川弟は「もともと音楽は自由であると思っている」と言っていて、私もその言葉にとても共感するんです。クラシックの名曲にはピアノの繊細なリズムの奥深さが宿っている。そこにダルブッカの華やかで即興的な感性が加わることで、新しい命が吹き込まれるような感覚があります。
——2025年8月には、ミニリサイタルも開催予定とのこと。内容について少し教えていただけますか?
宇田川8月に行われるサマーサロンコンサートにおいて私のミニリサイタルも行われる形になっています。10月にはオータムサロンコンサートが開かれ、弟といっしょに出演する予定です。 8月のミニリサイタルは私のソロで40分なので、身が引き締まります。いま非常にピアノ演奏への熱意に溢れているというか。自分が変化してきていることを感じているんです。これまでの成果を披露する意味でも、自分と向き合いながらリサイタルに挑戦していきたいと思っています。 10月は弟と3曲演奏します。とくに3曲目が華やかで、ピアノソロの曲ですがダルブッカが加わることで想像できないほどオリジナル性が溢れる音楽になりますので、是非楽しみにしていてください!
——最後に、クラシック音楽を愛する読者の方々へ、メッセージをお願いします。
宇田川私はずっと、ピアノに対して自由な距離感で向き合ってきたように思います。ピアノと出会い、ヨーロッパへ学びに行き、留学もしました。嬉しいことも苦しい時もありましたが、目の前のことを一つずつ誠実に取り組むことで、最善の道を歩むことができたと実感しています。 クラシックが好きな方はもちろん、音楽が好きな方、あるいは何かに迷っている方。音楽はどんなときにも私たちに寄り添ってくれる素晴らしいものです。私もこどもの頃の思い出を胸に、夢に向かって一歩一歩進んでいきたいです。私の演奏が少しでもみなさまのお力添えになることを願っております。
——本日はありがとうございました!
(インタビュー・構成/交告承已)
中の人は、アマチュアオーケストラで打楽器をやっています